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2016.11.24

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レビュー

村上龍エッセイシリーズ「すべての男は消耗品である」

少なからず人間の何かは0になるまで消耗する。

普段は意識しない。

でも今この瞬間も確実にそこへ向かっている。

なのに、なんでったら、村上龍はわざわざ「すべての男は消耗品」なんて言うんだろう?しかも男だけって、、

本の背に書かれているタイトルにそう文句を言いながら手に取った。

(1)死なないこと(2)楽しむこと(3)世界を知ること―すべての男は消耗品である。〈Vol.4〉 (幻冬舎文庫)

つまり「男は女に対しどうしようもなく消耗品で、そんな俺達は消耗品であることを自覚して、今この瞬間を楽しんで生きるしかない」ってことらしい。ネガティブでも自暴自棄でもなく、これを自覚してこそ男として強くなれるし、女から自由になれるんだって具合いのメッセージ。

このエッセイの初期は、日本がバブルを迎えて都心の多くの人たちが有頂天ムードにある中、 村上龍がさらに人より美味しい思いをしながら書かれている。

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人を馬鹿にして、快楽を自慢して、ニヒルな物言いみたいなのは、景気が良かったから余裕をもって受け入れられたんだろうな。今だったら無理だと思う。そういう時代を感じさせてくれる本。

大衆嫌い、個人主義万歳、ファシズム超オッケー!な村上龍(今現在は違うと思うけど)が書くエッセイは、嘘でも成立する小説とは違う力を発揮する。

とはいえバブル期はひどい。大体がこういう感じ。↓

・・・
「私は今とある国のリゾートホテルのプールサイドでこの原稿を書いている。詳しい場所は、残念だが明かせない。朝7時に家を出て夜9時に帰ってくる生活をしている会社員には想像もつかない美しい場所、とだけ言っておこう。ここのバーで、フェラーリのような美しい曲線を描くラテン美女が作るモヒートは格別に旨い。今まで飲んできた酒はなんだったのだろうと考え込んでしまうほどだ。例えば缶チューハイ。こんなものを飲んでいる男は良質なおまんこができない。創造性に乏しく、何の成果もない。そんな変態男がこのモヒートを飲んだら失神してしまうだろう。ああ、せっかくこんなところにいて、なんで日本人のことなんか考えなくてはいけないのだろう。イライラしてきた。欲望をごまかして生きるような男はカス。もういいや。じゃあ、プールでひと泳ぎしてオマールエビを食べてきまーす・・・。」マジでこんなん。

 

基本的に小説を書いた際に出たオカラみたいなものの寄せ集めばっかりだし、「こういう時代もあって、活字でおまんこおまんこ言ってたやつもいるんだー」くらいには楽しめるかもしれない。

村上龍へのリスペクトがあるなら是非これを。ちゃんとした内容のエッセイが読みたいなら、村上春樹の方がオススメかもしれない。

 

このエッセイを読むと、 村上龍は小説だけでなく、結構色々やってるって事が分かる。

まず自分の作品を、監督・脚本をやって4つ映画化してる。

その中で「KYOKO」はアメリカ・ニューシネマの巨匠ロジャー・コーマンとタッグを組んで英語もまともに喋れないのに全てアメリカでロケして本気で海外に売り込むつもりだったらしい。

どの映画もレビュー見る限りだと酷評で、中にはDVD化すらされてないのもあって、逆に気になる。

それから、キューバにめちゃくちゃハマって、「日本の音楽なんて糞食らえ。キューバ最高。音楽ってこれやで」 っていう時期があって、

「キューバの音楽の良さを日本に知らしめたるわ」って自分で音楽レーベルを立ち上げてキューバ音楽をたくさん輸入してCD売ったりコンサートとかもオーガナイズしてた。

それも「正直言って、売れてない。」ってエッセイに綴ってあって、その頃はもうバブルも終わってた。

それ以降のエッセイのテーマは政治・経済、社会的問題が多く扱われるようになった。

 

とにかく、この人のエネルギーは凄まじい。村上龍オタクの俺としてはそこに感動した。小説家としてのキャリアの頂上であぐらをかいているのではなくって。まさしく彼は「69」のケンそのもの。

 

このエッセイシリーズは1984年から始まって14作あるけど、途中から「消耗品」というタイトルは使われなくなった。

 

そんなそんなで昨日(2016年11月23日)、15作目のエッセイが発売された。

星に願いを、いつでも夢を
星に願いを、いつでも夢を。

最新の村上龍!↓

「偏愛を経て別の人生をイメージする」以外、刺激的な日常も、充実感や達成感も手に入らない。別の人生をイメージできない人は、今の人生を受け入れるしかなく、それは閉鎖的で、本質的に辛いものとなる。精神の収縮、すなわち「抑うつ」がその人を覆うようになる。

単に「夢」ではなく「偏愛を経て別の人生をイメージする」と表現するあたり痺れる。

すべての男は消耗品である。VOL.1~VOL.13: 1984年8月~2013年9月 連載30周年記念・完全版
Kindle版だとVOL1~VOL13がまとめて1250円で読める。

 

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