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【画家】小松美羽展「神獣〜エリア21~」で感じた魂と人知を超えた存在

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「小松美羽」という現代アーティストがいる。

俺は小松美羽展「神獣〜エリア21〜」で彼女の存在を知った。

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ある日、この展示会に当時見習いとして常駐していた友人の画家亀井佐知子が小松美羽展「神獣〜エリア21〜」の存在を教えてくれた。

送られてきたURLを開き、「神獣〜エリア21〜」のサイトを見て、強烈に惹かれるものを感じた。

以下がサイトにあった展示会の説明文

【エリア21】
地球を観る。
21世紀、人類の惑星間移動が始まった。かつて、彼らが飛来したとき、宇宙から観る地球には、国境は無かった。
彼らは、20のAREAに分けて探索した。
しかし、それらのAREAには留まらずAREA21に住むことにした。
私たちは何故、ここに居るのか。そして、彼らは何故、ここに居ないのか。
宇宙の法則の入り口に立ったとき、AREA21が見えてきた。
私たちは、彼らがしたように20のAREAを観ることにした。
そうすれば、AREA21へと導かれるであろう。

…訳がわからなかった。

AREAってなんだ?

これはフィクション?ガチ?

小松さんにはなにが見えていて、なにを考えているんだろう?

色々な疑問が頭をよぎり、好奇心を刺激され、小松さんの絵を生で観たいしとにかく行ってみようと思った。

開催期間は2017.6.3(土) – 6.11(日)。3日と4日にはすでに描かれた20体の神獣に加えて、21体目の神獣がライブペイントされるという。

俺は石垣への出発を先延ばしにして初日のライブペイントを観に、会場がある紀尾井カンファレンスへ足を運んだ。

 

小松美羽の「ご挨拶」

会場に着いた。

中に入るとまず門番のように描かれた2体の何かが目に入った。生き物っぽさはあるが、明らかに俺が知っている生き物ではない何かだった。

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俺は視覚的に幽霊や霊魂みたいなものが見えるタイプではない。だが、そういった何かを、何かしらの形で感じる人がいることは知っている。小松さんはそんな人だと思った。

絵を見ただけじゃ、俺にはわからないことがたくさんありそうだったので、小松さんの書いた文章が読みたかった。

そして、入り口すぐのところにある小松美羽さんによる挨拶文を読んだ。

ご挨拶

私には何よりも大切だった事がある。
それは母が用意してくれた広告紙裏に絵を描く事だった。姉妹で夢中で描きあった日々があった。ふとここで思い出す。私はなぜ人ではなく神獣を描くのか。それは幼少の頃の体験が大きい。あれはいつだったか正確な歳が思い出せない程昔。田んぼ道でぶらぶらする私の視界の先に、ふさふさで尻尾を揺らす茶褐色の山犬が現れた事がきっかけだった。それからというもの時々、私が道に迷うと山犬が数メートル先に現れ、何度も後ろを振り返りながら私を目的の場所へと導いてくれる経験をした。
最後にその山犬を見たのは中学3年生の冬。ある吹雪の日、図書館に向かい橋を渡る。
私は足を取られながら、凍てつく世界で今この時間に私だけしか存在していないような感覚に襲われ足を止めた。それでも先に進まなくてはと先に目を凝らすと懐かしいあの子がいた。
吹雪の中なぜか今度は真っ黒な毛でじっと佇み私を見つめていた。
「あっ。」
私が声を出すと同時にあの子は振り返りながら私の先を歩き始めた。それからふと視界を外した時だった。雪に肉球の跡が無い事に気がつく。そして、はっとして顔を上げるとあの子はぐるぐると円を描いて消えてしまった。
そんな体験があったから私は神社いる狛犬に注目することが多くなった。そこにはあの子の気配があったからだ。森にいくと人ならざる者たちの息吹で溢れていて、ああ人間の世界が全てではないと言う確かな感覚があり、それは救いだった。その確信こそ私が子どもながらに求めていた平等そのものだった。
絵の始まりは神事に通じるのだけれど、その原点に立ち返るには今のアートは随分エゴイスティックな歴史を踏んでしまったようにも感じる。もともと神や見えない世界を伝えるためのツールであり、そこに人々の魂の救いがあるように思う。だからこそ今も、あちらの世界を感じ彼らが見える私は、使命のように神獣を書くのだろう。
ただこれだけは言える。

魂が叫んでいる、描けと!
そして魂の成長に純粋な画家であれと!

2017年6月

(「ご挨拶」文字起こし)

キタ おもしろー、読んだほうがいい #小松美羽展 #神獣エリア21

Takahiro Terry Naitoさん(@t_terry_n)がシェアした投稿 –

文章からは書き手の人間性が滲み出る。

俺はこの挨拶文を読んで、「小松美羽」は正直で強い人間なんだなと思った。

人間、正直でいることは簡単なことじゃない。弱い人間は自分にも他者にも正直ではいられない、嘘をついたり、隠し事をしたりする。在りたい姿と実際の姿に隠すべきだと思うギャップを感じるから、嘘や秘密を自分の中に抱える。

ありのままの自分を表現できる人間は強いと俺は思う。自分にも他者にも嘘をつかない事は強さだ。

堂々としたシンプルで率直な小松美羽の言葉からそういう強さを感じた。

 

小松美羽の「絵」

会場にある約50点の絵を歩いて見て回った。

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強く惹かれた。

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どの絵も目が尋常ではない迫力を放つ。

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絵の具やペンが何層にも重ねられ厚みのある絵。

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これが小松美羽の魂が「描け」と感じる作品なのか。

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挨拶文には「今も、あちらの世界を感じ彼らが見える私」とはっきり描かれいる。

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小松さんに見えているものをこうやって表現しているのか。

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俺は今それを観ているのか。そう考えながら「神獣〜エリア21〜」に展示された絵を観ると、それらの持つ魅力はより増した。

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これが実際に見えている人がいる。ここで表現されているものはフィクションではなくどこかのレベルで実在している。

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そしてその事実に対して、この絵たちは半端ではない説得力を持つ。

世界的に活躍し評価されている小松美羽の絵には、現在数百万円〜の価格がついている。(http://miwakomatsu.thebase.in/でも売っている)小松美羽氏の感じるものやその最終的なアウトプットに対してそれだけの価値を見出している人がいるということだ。

正直言ってこの展示会も小松美羽氏もぶっ飛んでいる。この展示会のテーマは現代日本の日常生活で真面目に語られるようなものではない。

仮にもし、何の実績もない誰かが全く魅力のない作品を通して「僕には神獣が見えるんだよ〜!世界にはこんなものがあるんだよ〜!ねぇ見てみてぇ〜!」と叫んだところで、誰も相手にしないだろう。たとえ本人が「魂が叫べと言っているんだ…世界に伝えることがあるんだ…使命なんだ…っ」と思っていたとしても説得力がなければ、伝わらないどころか冷笑されて終わりだろう。また、関係性によっては本人を心配するか怖くなって、正常に戻さなきゃ、とそいつの魂を去勢しようとするだろう。

しかし、小松美羽氏ほどの信念と実力とそれに伴う説得力を持てば、そうはならず、作品を観る人に何かを与える。

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「あちらの世界の神獣」というテーマに、深く真摯に切り込んだこれらの作品から感じるパワーは、紛れもなく本物だった。

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そして、己の魂に従い、説得力を持って(つまり自分事だけで終わらさず)人々を魅了する作品を生み出す小松美羽は、人間として強く美しいと感じた。

 

21体目の神獣のライブペイント

15時にライブペイントが始まった。満員のため俺は会場外のパブリックビューでそれを観た。開場前から行列ができて整理券は速攻でなくなったらしい。

ライブペイントの開始と同時に空が晴れた。

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これから絵の具を塗りつける壁のようなキャンパスの前に正座して、小松美羽は目を瞑った。礼をして、描き始めてからは突き動かされるように全身を使って神獣を形どっていった。

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直接キャンパスにチューブから絵の具を塗りつけて、手のひらや指を使って描いていく。

白装束はみるみる汚れていく。

時には絵の具を手に乗せてそれをキャンバスに投げつけて絵を描いている小松美羽氏は、なんというか、子どものように純粋に見えた。多分、純粋でなければこういう事は為せない。

そしてやはり純粋である事は美しいと思った。

 

小松美羽展「神獣〜エリア21〜」に行ってみて

とても有意義な時間だった。

純粋に自分の魂に従って生きて、それを体現し、表現する人は人々に勇気を与える。

この展示会を通して、俺もなんだか「自分の人生を生きる」ということに対して小松美羽氏から勇気をもらった。

俺を通して見た「誰かの素晴らしい表現」を今ここでこうやって書いておくことによって、自分がもらった勇気を誰かにおすそ分けできたら嬉しい。

勇気を持って純粋に生きることを楽しめる人が増えたら、単純に言って世の中は良くなると思う。

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余談だけど、今日亀井佐知子が石垣島に、俺が依頼した絵を描きに来てくれる。

彼女も小さい頃から絵を描いていた。純粋に見たものを描いていたが、それが人に理解されることはほとんどなかった。ひょんなきっかけで亀井佐知子は小松美羽さんに出会い、今まで誰にも理解されることがなかった自分の絵を見せに行った。

「見えてるものをそのまま描いているんだね、悪いものが見えてなくてよかった」と小松さんは言ったそうだ。亀井にとって初めての共感者だった。

このような異次元に存在する魂(のようなもの)を表現する者同士の共感が、俺の中でそれらの存在に対する認識をまた塗り替えた。

亀井はその出会いの時に「神獣〜エリア21〜」に毎日来るように言われ、そしてさらにはそこで自分が描いた絵を出展する機会を得て、それら10点は完売した。

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亀井佐知子は現在画家として活動している。(亀井佐知子のポートフォリオ「カメレオン」)

俺は彼女から聞いたストーリーや作品に強く惹かれた。

亀井佐知子や今描いてもらっている絵に関してもまた近いうち書きたい。

『十魂百声』 canvas / oil / F20 652×803mm

Sachiko Kameiさん(@kameleon823)がシェアした投稿 –

小松美羽さん、有難うございました。

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COMMENTS

  1. 小松さんは私も知ってます!
    素敵な絵を描くとも思いますが、現実を見て、売れるためには、泥臭い地道なプロモーションと努力が必要、ということもきちんと知っておくべきなのではないでしょうか?

    アートの雑誌「アートコレクターズ」2019年の3月号に載っていたもので、小松美羽のプロデューサー本人が、売れるためにどんな努力をしてきたか、雑誌のインタビューに答えていました。

    以下、要約しつつ、引用します。
    参考になれば幸いです。

    “他のアーティストとの決定的な違いとして、プロデューサーであり彼女のブランディングを担当する高橋紀成がついている。

    どのように小松美羽はプルデュースされたのか?
    小松美羽を大々的に売り出した影の立役者が高橋紀成である。

    1、形容詞「美しすぎる」を付けて売り出す
    “小松のプロデュースを決めた高橋がまず行ったのは、「形容詞」をつけることであった。高橋:「小松がメディアに大々的に報じられたのは、『美しすぎる銅板作家』としてでした。これは週刊プレイボーイに特集されました。何者でもない人間を有名にしていくにあたり、形容詞は必要です。・・・やがて有名になるにつれ、形容詞が取れ、小松美羽として独り立ちするわけです」
    このプロモーションで知名度が一気に上がった結果、・・・メディアへの露出が増えてくる。・・・高橋の、テレビや広告業界でのキャリアとそこで培った人脈が、メディア戦略に優位に働くことは容易に想像できる。メディアにのせるコンテンツは、「小松美羽=現代の巫女」としての物語だ。
    次に興味を持つのは、マスへのプロモーションがいかに販売に結びつくのか・・・”

    2、富裕層へのアプローチ&開成高校人脈をフル活用
    “「現在、コレクターの割合は、日本40%、中華圏(台湾、香港、北京、上海、シンガポール、マレーシア)50%、ヨーロッパ3%、アメリカ5%です。
     アートを買える人を考えた時に、アピールすべきは美術界ではなく経済界。マスメディアを使って広く一般に情報を伝える一方で、興味を持ってくれた企業の経営層や銀行の頭取、政治家、役人といった人に個別にアプローチをしていきました。
    加えて開成高校の卒業生が、各界の重要なポストについていることもあり、開成人脈のサポートも強力です。・・・総じて言えるのは、彼らは既存のアートコレクターではない、ということです」

    3、小松美羽をアピールするための情報を100人〜500人、毎日、10年間送り続ける
     高橋は、小松の作品の成約情報や著名人からの高評価、今後の展示会へのプロセス、美術館の収蔵への動きなど、小松をアピールするための情報を毎日、100人から500人に対して10年間送り続けているという。マスメディア戦略と、インフルエンサーや顧客になりうる人々への一対一の地道なプロモーションが、現在の小松美羽を巡る状況を生み出していることは間違いない。”

    4、作品の価格のコントロール
    “「ギャラリーからは値段を上げたいと言われていますが、プライマリー価格は上げず、キープしている状態です。今は値段を上げるよりも、アジア各国にそれぞれ30名以上のコレクターを作り、一国の経済に左右されず、アジアでの地盤を確立させることが先決です。というのも今後、作品がセカンダリーマーケットに出てきた時に(もちろん自分たちでも買い支えますが)作品を買い続けてくれるコレクターが必要であるからです。アジアでインターネット広告を数十万円規模で投じて、一定以上の露出をしているのも、アジア戦略の一つとして既に2年前から行っています」”

    5、欧米での実績づくり
     高橋はこの雑誌のインタビューで、小松について好意的に書かれている論考を英語に翻訳して海外に発信することも積極的に行っている、と明かしている。日本美術に力を入れている欧米の美術館にアプローチを続けているそうだ。
    そしてその結果、”「クリーブランド美術館のキュレーターSinead Vilbarさんは・・・(小松の)動画、英文記事、作品画像を見て、神道をテーマにした「Shinto: Discovery of the Divine in Japanese Art」に小松を選出してくれることに”結果が結びついている。

    以上です。長々と失礼致しました。

  2. 小松さんは私も知ってます!
    素敵な絵を描くとも思いますが、売れるためには、泥臭い地道なプロモーションと努力が必要、ということもきちんと知っておくべきなのではないでしょうか?

    アートの雑誌「アートコレクターズ」2019年の3月号に載っていたもので、小松美羽のプロデューサー本人が、売れるためにどんな努力をしてきたか、雑誌のインタビューに答えていました。

    以下、要約しつつ、引用します。
    参考になれば幸いです。

    “他のアーティストとの決定的な違いとして、プロデューサーであり彼女のブランディングを担当する高橋紀成がついている。

    どのように小松美羽はプルデュースされたのか?
    小松美羽を大々的に売り出した影の立役者が高橋紀成である。

    1、形容詞「美しすぎる」を付けて売り出す
    “小松のプロデュースを決めた高橋がまず行ったのは、「形容詞」をつけることであった。高橋:「小松がメディアに大々的に報じられたのは、『美しすぎる銅板作家』としてでした。これは週刊プレイボーイに特集されました。何者でもない人間を有名にしていくにあたり、形容詞は必要です。・・・やがて有名になるにつれ、形容詞が取れ、小松美羽として独り立ちするわけです」
    このプロモーションで知名度が一気に上がった結果、・・・メディアへの露出が増えてくる。・・・高橋の、テレビや広告業界でのキャリアとそこで培った人脈が、メディア戦略に優位に働くことは容易に想像できる。メディアにのせるコンテンツは、「小松美羽=現代の巫女」としての物語だ。
    次に興味を持つのは、マスへのプロモーションがいかに販売に結びつくのか・・・”

    2、富裕層へのアプローチ&開成高校人脈をフル活用
    “「現在、コレクターの割合は、日本40%、中華圏(台湾、香港、北京、上海、シンガポール、マレーシア)50%、ヨーロッパ3%、アメリカ5%です。
     アートを買える人を考えた時に、アピールすべきは美術界ではなく経済界。マスメディアを使って広く一般に情報を伝える一方で、興味を持ってくれた企業の経営層や銀行の頭取、政治家、役人といった人に個別にアプローチをしていきました。
    加えて開成高校の卒業生が、各界の重要なポストについていることもあり、開成人脈のサポートも強力です。・・・総じて言えるのは、彼らは既存のアートコレクターではない、ということです」

    3、小松美羽をアピールするための情報を100人〜500人、毎日、10年間送り続ける
     高橋は、小松の作品の成約情報や著名人からの高評価、今後の展示会へのプロセス、美術館の収蔵への動きなど、小松をアピールするための情報を毎日、100人から500人に対して10年間送り続けているという。マスメディア戦略と、インフルエンサーや顧客になりうる人々への一対一の地道なプロモーションが、現在の小松美羽を巡る状況を生み出していることは間違いない。”

    4、作品の価格のコントロール
    “「ギャラリーからは値段を上げたいと言われていますが、プライマリー価格は上げず、キープしている状態です。今は値段を上げるよりも、アジア各国にそれぞれ30名以上のコレクターを作り、一国の経済に左右されず、アジアでの地盤を確立させることが先決です。というのも今後、作品がセカンダリーマーケットに出てきた時に(もちろん自分たちでも買い支えますが)作品を買い続けてくれるコレクターが必要であるからです。アジアでインターネット広告を数十万円規模で投じて、一定以上の露出をしているのも、アジア戦略の一つとして既に2年前から行っています」”

    5、欧米での実績づくり
     高橋はこの雑誌のインタビューで、小松について好意的に書かれている論考を英語に翻訳して海外に発信することも積極的に行っている、と明かしている。日本美術に力を入れている欧米の美術館にアプローチを続けているそうだ。
    そしてその結果、”「クリーブランド美術館のキュレーターSinead Vilbarさんは・・・(小松の)動画、英文記事、作品画像を見て、神道をテーマにした「Shinto: Discovery of the Divine in Japanese Art」に小松を選出してくれることに”結果が結びついている。

    以上です。長々と失礼致しました。

    • TERRY TERRY says:

      プロモーション、大事ですよね。特に伝えたいメッセージがある場合。
      つくること自体が最大の目的なのか、伝えることが最大の目的なのか、色んな表現者がいると思います。小松さん(とそのチーム)には、伝えたい強い気持ちがあるんだなということを展示では感じました。

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