アルバニアは日本ではあまり聞くことがない国です。俺もフランスにいる時に出稼ぎに来ているアルバニア人の友達ができて初めてこの国の存在を知りました。最初聞いた時は「ん、アルメニア?」って勘違いしていたくらいです。
アルバニア人に話を聞いたり、彼らと一緒に時間を過ごしている間に、この国に強い興味を持ち、その後実際に友人を訪ねにアルバニアを訪れてみました。
その時の様子はこちらの記事にまとめてあります。→南欧旅 13 桃源郷のような農家に滞在しながら遊び尽くす【アルバニア】
この記事では謎の国アルバニアに関する興味深い歴史と、個人的に大好きなアルバニア人という人種について書いていきます。
江戸時代の日本と同じく、アルバニアは鎖国をしていました。それもつい最近の1992年まで。そりゃマイナーなわけです。
第2次世界大戦後に半鎖国状態の共産主義国家となり、1978年には完全な鎖国状態になりました。
半鎖国状態の時、1961年の中ソ対立を契機にアルバニアは対ソ連批判を展開し始め、敵の敵は味方ということで中国に接近し、中国から経済援助を受けるようになりました。
しかし、その後1976年、仲のよかった中国で文化大革命が収束し改革開放路線に転換すると、一転して中国批判を開始し始めます。国外からの唯一の頼みの綱であった経済援助も受けられなくなり、世界的孤立は一層進みました。同年、国名をアルバニア社会主義人民共和国へ改称し、いよいよ完全な鎖国状態になります。
このような歴史をたどって、経済的に衰弱していき、1980年代には、欧州の最貧国とまで揶揄されるになりました。
また、半鎖国状態であった1967年に共産党政府が「無神国家(無神論国家)」を宣言しました。これはすべての国民がいずれの宗教も信仰しておらず、そのため国内にはいかなる宗教団体および宗教活動は存在しないという宣言です。このため近年までアルバニアではどのような宗教活動が行われているのか国外からは全く不明でした。
その後、1992年の総選挙によって、戦後初の非共産政権が誕生し、ここでようやく民主化し鎖国が終わりました。開国の流れとともに信教の自由も認められるようになりました。
鎖国が終わり、1990年代に市場経済が導入され外国からの援助や投資を呼び込み始めると、投資会社という名目でねずみ講が国外からやってきます。
ねずみ講は、そのシステムへの参入者をねずみ算的に増やしていかなければ成立しませんが、いつか必ず必要参入者数が人口を超えるので破綻します。
長い間鎖国状態にあり、経済的な知識などが乏しかったアルバニアの国民はねずみ講の危険性を知りませんでした。その結果国民の半数が参加してしまうまでになります。
そして97年初頭に、ねずみ講大手6社が一気に破綻し、なけなしの財産を多くの国民が失い、暴動やデモが多発しました。
その後、政治的安定も達成し、国際社会とも結びつきを強め、経済も順調に成長していますが、国民の平均年収は120万円ほどであったり、インフラ整備が追いついていなかったり、未だに豊かとは言い難い状況にはあります。
人の中身に関しては統計的なデータなどがあるわけではないので主観を通した見方にはなってしまいますが、アルバニア人は一言で言えば、「誇り高い」人種だなと思います。
出会ったアルバニア人はもれなく「アルバニア」という自国と、「アルバニア人」である自分に対して誇りを持っていました。言い換えれば愛国心が非常に強い人種でした。「アルバニア」という要素を自分のアイデンティティの一部として強く持ちながら生きているのです。プライドというものをもろに感じさせてくる人間ばかりでした。
そのへんの感覚を日本にいて強く感じることはあまりありません。「日本に生まれてよかった~」くらいのことを感じることはあると思いますが、この時代の日本で「日本という国に生きる日本人としての誇りやそれに対する愛」を常に考え続け、実感し続けながら生きる人はあまりいないと思います。
また、アルバニア人は仲間意識も非常に強い。パリで出会った出稼ぎに来ていたアルバニア人たちは相手がアルバニア人であるという理由だけですぐに仲間になり助け合います。彼らはよく「辛い時を過ごしてきたからこそ困難にあっている人の気持ちがよくわかる。だから助けるんだ。」と言っていました。
アルバニアには日本の武士道に通じる「ベサ(besa)」という文化があります。これは「約束を守る」という信念であり、アルバニア人の精神的な柱です。日本でいうところの「暗黙の了解」などの不文律の共通認識に近いものとも言えるかもしれません。
(外部リンク【日本には「武士道」、アルバニアには「べサ」がある】アルバニア共和国在日大使夫人レコ・ディダさんの記事)
(外部リンク【ノマドワーカー的海外旅行 アルバニアひきこもり編】)
アルバニア人は友人に嘘をつかないし絶対に裏切らないと彼らはよく言います。
「お前が傷つけられたら、お前がそいつを殴る前に俺が殴る。」と言うようなセリフをよく言います。
実際当人たちだけでなく、他国の人間も「アルバニア人は熱く、強く、情に熱く、そして敵に回すと怖い。」というようなことを言います。
極東にいると全然こんな話は耳に入ってきませんが、とにかく、アルバニア人はめちゃくちゃ尖っていることでヨーロッパ界隈では有名なのです。
ちなみにマザーテレサはアルバニア人です。
一方で愛国心が強く、情に熱く、仲間思いであるが故に敵に対しては容赦ありません。
パリにいた時にちょうどその時期にEURO2016が開催されており、広場でライブビューイングがあったのですが、アルバニア戦の時は毎回対戦国とファンの群衆同士で喧嘩が起こっていました。
また、政治的な背景から隣国のセルビアと仲が悪く、2014年に行われたEURO予選、敵地ホームでのvsセルビア戦では、試合中に観客がアルバニアの国旗をドローンでフィールド上に飛ばし、それがきっかけとなってセルビア選手&セルビアファンvsアルバニア選手の乱闘となり、試合が打ち切られましたこともあります。
あるアルバニア人の友人が聞かせてくれた印象的な話があります。彼が高校生の頃、ある学生がプライドを傷つけられる形で通学バスで席を奪われ、次の日、休み時間中にバスで席を奪った奴のクラスに親父のマシンガンを持って乗り込み、そいつをクラス全体の前で蜂の巣にして殺したということがあったそうです。また、この話を聞かせてくれた彼自身も女関係でトラブルがあった奴のところに親戚や仲間を連れて乗り込み相手の頭に銃を突きつけて、泣きながら謝罪させたことがあるらしいです。
日本の常識からすると信じられないような話なんですが、彼らと接したり、実際にアルバニアに行ってみると、本当に彼らはそういう世界で生きているんだなということを実感させられます。(ついこの間もフランスからの電話で、リオンにいるアルバニア人の友人が銃の所持で警察に捕まり収監されてしまったと知らされました。。)
男らしくない男が1人もおらず、みんな彫りが深く古代戦士彫刻のような顔と鋭い目を持ってます。傾向としてそういう感じというわけではなく、本当に全員そうなので、驚きです。
このようにアルバニア人は強い精神力を持った人間なのです。
歴史や、現在の貧困状況が、アルバニアを孤高の国にし、それゆえに生まれた特徴なのかもしれません。
鎖国からの開国直後の江戸時代の武士の名残みたいなものが今のアルバニア人にもあったりするのかな、なんて勝手に妄想したりします。
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